30阿蘇(高岳・中岳)vol.2(いぶし銀忍者に出会う)


2人行 仙酔峡から高岳目指して登山中に、年の頃は60を軽く超えられた面持ちのご夫婦に出会いました。私が暑さと自分の肉体の重さに苦しんで登っているのを見かねて、「大丈夫? 二日酔いなの? 体調が悪そうだね ハイ冷たいジュースを飲みなさい」と色々と世話を焼いて下さいました。

「実は最近不摂生がたたって、体重が90㎏を超えてしまっているんです」

「へー、それだったら僕の約半分だね、それじゃきついね」と明るく笑われる。よっぽど死にそうにみえたのだろう、高岳頂上までこのご夫婦は私に付き添って登って下さった。先に着いていた化け物S君にご夫婦を紹介し、休憩しようと荷を降ろすまでは、登山中に良くある話で、別に珍しくはない。しかし、ここからが今まで見たことのない世界(忍者の世界?)の始まりです。

「ちょっと僕、この下に蝶の通り道があるので、見てくるね」と言った途端くるりと身を翻し、月見小屋の方へ飛んでいくではありませんか!もちろん実際飛んではいませんが、全速力で音も立てずに岩と岩との間を飛び移るようにしてものの1分で月見小屋前の最低部まで走っていかれました。私は奥様に「ご主人は熊本では有名な方なのですか、どう見てもただ者じゃないですよ」と伺ってみたら「別に普通の人ですよ」と。

僕とS君は「とんでもない人を見たね、すごい人もいるもんだね」、「ええそうですね、身が異常に軽い方ですね」5分ほどその場でしゃがんでいらしたが、またすごい勢いであっという間に引き返して来た。「蝶は今日はいなかったよ…」と。その後頂上で最近熊本に転勤してきた人と話す機会を得て、しばらく登山談義。「次は根子岳へ一緒に登りましょう」と忍者と転勤の人が意気投合した。「私も近くに住んでいれば、いや太っているので迷惑をかけてしまう」と思い。根子岳の話には加わらなかった。30分ほど歓談した後、私とS君は「地獄温泉」に行くため、ちょっと先を急ぐことにして、ご夫婦に別れを告げました。

しかし、高岳から中岳への下りの道中、真後ろから飛ぶように走ってくる人がいる。「あ、忍者さんだ」「ごめんね、トイレに行きたくなったから、先を急ぐね」と言いながら風を切って走り去って行きました。結構中岳山頂の火口口から登ってくる人たちが多かったのですが、その人たちとぶつからないように登山道の脇をコースを外れたところをジャンプしながら、おりていきました。S君と二人「またとんでもないものを見たね…」「ハイ…真似せよと言われても出来ませんよ。とうてい無理です。」20代の彼が兜をぬぎました。あの人を忍者と呼ばず何と呼ぶ?まるで映画さながらのヒーローが活躍する場面のようでした。

ロープウェイの所でトイレを済まし、忍者さんは奥様の到着を待たれていました。「気をつけて下りるんだよ」と言われ再び分かれましたが、下の駐車場に着く頃また忍者さんが上から降ってわいて来ました。若い女の子が目を白黒させています。それもそのはず、いい年をした人がコンクリートの階段を3段づつ飛ばしながら飛んでくるのですから…。「あなたを心配していたんだよ。割と早く下りれたね。良かった良かった。」この忍者に弟子入りしたいと思いました。名刺を差し出したら、連絡先を教えて頂きました。

後日談として、この方にはその後も写真を頂いたり、年賀状を頂いたりしています。体力があれば山は楽しいと感じさせていただきました。若者を凌駕するその圧倒的な脚力には脱帽するばかりですが、少しでも近づけるよう精進しなければと心底反省し、体重を減らす決心をしたのでした。

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